映画 「父と暮らせば」
何の前知識もなしに、宮沢りえが出演しているというだけで『父と暮らせば』を岩波ホールまで観に行った。 戦後60年記念企画と題し戦争レクイエム連続上映の最後の作品。
何シーンかに浅野忠信が出てくるだけで、ほとんど原田芳雄と宮沢りえの二人芝居だった。
始まってしばらくしてある娘の台詞で父親が亡霊であることに気づいた。 演劇みたいだなと思っていたら、ラストのテロップで井上やすし原作とわかる。 亡霊が出てくるあたり能のようなセッティングだなとも思う。 父親は般若のような顔はしていなかったが・・・ むしろ狂言回し的。 この映画が原爆を扱っているとはまったく知らなかった。 重い題材を娘の幸せを願う父親の気持ちとコミカルな台詞で観る者に痛みを押しつけない。 劇中の父親の台詞のように、物語の中に原爆を織り込んで人にそれを伝えるという作者の気持ちが伝わる。 コミカルな台詞も行き過ぎない。
原田芳雄は『亡国のイージス』の首相役もよかったけれど、この父親役はもっとよかった。 宮沢りえはせつない。凜としたものも儚さも感じさせる稀有な女優だと思う。 それでいておキャンなところもあるように思う。 『豪姫』からのファンである。
原民喜の「夏の花・心願の国」を読み直そうと思ったり、何故か佐賀純一の「戦争の話を聞かせてくれませんか」を買ったり、どこかの本屋で見かけた高見順の「敗戦日記」が気になって探したりしている今の私にとって思いがけない内容でズシリときたのだった。
2、3日前に友人や元生徒のblogで長崎・広島に住んでいたことや原爆の話をしたばかりでもあった。
知らぬ間にあちこちで戦後60年という文字が目に入っていて私の脳に伝達され、本屋では自然に手にするのか? ある種のシンクロニシティではないかしらん。
ところで、今日は秋の声がした。 昨日に比べて一日で急に昼が短くなった気がした。 有楽町のビル内にいることが多いせいか、今年の夏は蝉の声を一度しか聞いていない。 蝉時雨好きなのに・・・ 。
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