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03/25/2006

映画 「ヒストリー・オブ・バイオレンス」

お酒を飲まない私は仕事と自分の時間との切り替えのワンクッションとして映画を観ることが多い。 縁があって就いたバイトなので天に課されたドリルのようなものかと受け止めて頑張っている。 若い人達ばかりの職場で新しい発見があるかなと期待したが、残念ながら教わることは昔と少しも変わらない。 みんな年を取るのが早い気がする。

何年か前までは、長年音楽を演奏することだけで生きてきた。 ほとんどは夜の世界。 昼の生活に慣れるのに時間がかかった。 まだまだ慣れない。 違う人間を演じていると言えるほど職場に合わせて仕事している。

デビッド・クローネンバーグ監督の「ヒストリー・オブ・バイオレンス」を観た。 今年になって見応えのある映画の公開が続いている。 「クラッシュ」や「ブロークバック・マウンテン」とアカデミー賞を争っていたようだけれど、私は観た直後ならばこの映画を選んだかもしれない。 予告編を見たことがなかったが、チラシでストーリーのあらすじは知っていた。 すごく観たいという映画ではなかったのだが、監督がクローネンバーグだしウ゛ィゴ・モーテンセンが主役だしとなんとなく観た。

これまたすばらしい脚本だった。 田舎でダイナーを開いている静かな男が実は昔殺し屋だったかもしれないという出だしの事件。 他人の空似で間違われたのかなと思うくらいウ゛ィゴは静かで善良な男を演じていた。 しかし、昔のギャング仲間達が現れて正体がばれると、観ている私は彼の妻や家族と同じようにがっかりする。 今の彼が真面目だからいいじゃないと言ってあげたくなるくらい妻は彼の嘘を許さない。 家庭はみるみる崩壊してゆく。
この男が他人や自分の身を守るために暴力をふるい、ふるったことから昔が暴かれ正体が現れていく様が、ウ゛ィゴならではの怪しさではまり役だった。 妻役のマリア・ぺロが弁護士というのは納得いかなかったけれど、彼女もよかった。 彼を拒絶してからの階段でのセックスシーンはすばらしかった。 暴力的だけれど暴力ではない。 彼の必死の愛情表現に拒絶しながら身体が反応する。 彼への新しい愛の芽生えと言っていい。

ウィリアム・ハートの演技に唖然としたのは私だけだろうか。 「シリアナ」での裏ぶれた元CIA工作員役とは全く雰囲気の違う役、ウ゛ィゴの兄で大物ギャングを演じているが、なんとも言えない凄みがあった。 すごい俳優だなぁと改めて思った。 彼はこんな役は初めてじゃないかな?
始めから終わりまで台詞を聞き逃せない、見逃せない、観終わってから考えさせる映画だ。 自分の身にふりかかったらどうするだろうか?

                                             

携帯から

* 「東劇」で上映している。 観にいった日は外に出たら雨が降っていて、ふといい匂いがして辺りを見渡すと、なんとローズマリーのグリーンベルト。 木として大きく育っているのだ。 すばらしい!築地川銀座公園だったかな? 歌舞伎座を見る以外に東劇に行く楽しみが増えてしまった。 住んでいるアパートメントのエントランスにもローズマリーが植えてあるのだが、それよりも背が高い。 今の時期は薄水色の小さな花が咲いている。 

                                             

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Comments

クローネンバーグは「ビデオドローム」、「クラッシュ」、「戦慄の絆」、と好きな映画です。 (間違ってたらごめんなさい、映画はあんまり詳しくないで観てます。分析できないタイプです)
なんだったか「スキャナーズ」?まで観てました。

覗き趣味・・・ある意味ではシェイクスピアだってそんな感じありますよね。
文学とは・・・人を研究っていうか観察っていうか。
本読むかわりに映画観てるかな。

Posted by: Shoomy | 04/20/2006 at 04:35 AM

 私もアルコールを一滴も飲めない人間で、これはこれで、酒で身を滅ぼすことはないのだけど、お酒を嗜む人を羨ましくも思います。というわけで、むしゃくしゃする時も、機嫌の良い時も、映画を観るようにしています。人は、他人の性格、生活、人生を覗き見たいという人間誰でもある意識から映画を観たい気にさせる部分もひとつあるように思います。覗き趣味はないけれど、たまたまみつけた障子に穴が開いていたら覗きたくなる一人です。
 たまたま、なんとなくご覧になった映画が本作でよかった。デビット・クローネンバーグが少しだけ帰ってきました。クローネンバークのエロ、グロ、奇怪な世界を楽しんできた私としては、やや消化不良ですが、スクリーンから脚本のうまさが伝わってきます。秀作でした。
 予告をご覧になっていなくて良かった。あろうことか、予告は、すべてを語っているんです。エドロ・ハリスが付けまわすところまでのすべて。ハリウッドの予告製作は抜群で、他国を寄せ付けないけれど、この映画は、バラす。
 しかし、クローネンバーグ。オープニングの静寂な長回しとエンディングの静寂な家族の表情を・・・かなり意識して撮っています。やっぱり、映画は監督のものでした。次回が楽しみです。

Posted by: 冨田弘嗣 | 04/20/2006 at 04:06 AM

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