目印がない
たったひとつ信じていたものを見失ってしまいました。
濃い霧の中なのです。
もう 居場所がなくなりました。
今は 確かな点に立っているだけです。
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たったひとつ信じていたものを見失ってしまいました。
濃い霧の中なのです。
もう 居場所がなくなりました。
今は 確かな点に立っているだけです。
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物干し台から大家さんの庭 ベージュの芝の上に猫 軒下のいつもの野良猫 宙に向かって軽く猫パンチ 背伸びしてほほえみ遊ぶ いつもとちがう顔 風の精がいる きっと 坂道に向かってゆっくり散歩 風に吹かれ鼠の死骸ひとつ あの野良猫かあのカラス しっぽをつまみ草原に投げる かわいそうだけど気持ち悪い 早く土になぁれ 土の精がいる きっと ~クーヤンの一周忌に~ 宅 朱未 *クーヤンが逝ってしまってもう10年以上たってしまいました。
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心の扉を開こうとしたら
光の向こうに文字がたくさん見えた
私の名前の一文字が朱色で踊っていた
その文字は掴まえたんだけど
残りの文字をまだ見つけられない
何色だったか思い出さなくっちゃ
確か 青い色があったな
遠く霞んで見える山の色
藍色 浮世絵のあの青
文字が目の前をくるくる くるくる
掴まえられない
大好きな色なのに
探し求めた文字なのに
遠い記憶の中に廻ってゆく
宅 朱未
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小さな光る歯車がたくさん回って
大きな光る歯車が回って
そして 地球が廻っている
『地球は青い』って
宇宙人が見たら 透明かもしれない
月が欠けたとき 真っ黒かもしれない
年にいっぺん 緑色かもしれない
小さな光る歯車がこわれると大変だ
知らないうちに少しずつこわれたりすると
大きな光る歯車も少しずつ回らなくなってくる
どんなに小さな光る歯車でもとても大事なのだ
光る歯車がうまく回っていると 地球は廻って青く光る
宅 朱未
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まわる まわる 目がまわる
電波がまわって 情報がまわって
近ごろ 地球のまわりは忙しい
訳あって ゆっくりゆっくり まわっているのに
人間は猛スピードで駆けてゆく
そんなに速くまわると
気持ち悪くなるよ
電波が多すぎて
波動が乱れてしまう
テレパシーは大丈夫か?
地球の意志が届かない
自然の動きがもうわからない
あんまり速くまわると
まわりが見えないよ
宅 朱未
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初めに野原があった 草を食む動物たちが 静かに生きていた 肉を求める動物たちも 平和に生きていた すべての時が 自然に流れていた 地震が起こっても それは摂理だった 人が野を耕し 家を建てた 文明が起こり 技術が発達した 車が走り ビルが建ち ボイジャーが飛んだ 文化という 大きな大きな流れができていた 地震が起こると 破壊でしかなくなった でも 自然が悪いんじゃないよ! 人間は 戦争でも破壊する 自然が悪いんじゃないよ! 宅 朱未
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春の嵐にかまわずにぎわうスーパー
店先に激しくゆれるラベンダー
「連れて帰って 連れて帰って・・・」
ささやきが風に回って聞こえてくる
ぽっかり空いた胸の穴に飛び込んでくる
深夜のコンビニ まぶしすぎる灯り
片隅に干からびたヘリオトロープ
「助けて お願い! 連れて帰って!」
瀕死の白鳥みたいに羽を閉じている
疲れた身体にやわらかい力が湧いてくる
水をあげよう 苗に
水をあげよう 植物に
水をあげよう 乾いた心に
水をあげよう 傷ついている人に
水をあげよう 大切な人に
水をあげよう 自分を大事にするために
宅 朱未
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人は空気がないと生きられない
水中でも生きられない
この星の大気圏だけに生きる
真空に囲まれている
閉じ込められているのかな
どこから なぜ 生まれて
どこへ なぜ 死ぬのかな
宅 朱未
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ビルが笑っている
風にゆれて笑っている
会社がたくさん倒産して
引っ越していった
いっぱいあったコンピュータやら
コピー機やらなくなった
体が軽くなって
ゆれる ゆれる スローダンス
でも どこへ持っていったの?
宅 朱未
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父と母 遠くへ行く
私とぜんぜん違う方向
行くべき道を尋ねる
母 「それなら あっちよ」
私はひとりで歩きだす
空を飛んでいる どこかの駅前
大雨のため水溜り 浸水
ああ また水がたまってる
貝ボタン色の天井と壁
黒い木が格子になっている部屋
つるつるの床 濃いベージュのタイル
二階までずっとなだらかな廊下
マイルスと話している
片膝ついて 片肘ついて かっこいい
宅 朱未
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笑いだしたら体が浮いた
ふわふわ どんどん軽くなる
このままいったらどうしよう
またおかしくて笑いだす
目が覚めたら窓の風景が動いた
ビルが歩いてるみたいに
でも夢だった
海にもぐっている
体がイルカとかマグロのようになる
魚にまちがわれないかと心配
新しいコンタクトレンズ
丸みのある星型でやわらかい
ライブでギタリスト曲を忘れた
『ちょっと待って 思い出すから』
目をつぶっている ちょっと長い
まだかなぁと待っている
宅 朱未
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黒くどろどろに渦巻く思考
ゆがみ現れる隠された画像
コマ送りにささやきかける
悪夢にうなされた汗の苦さ
煮えたぎる嫌悪と不信
抑えきれず発射された邪推
突き刺さりふるえる言葉の棘
人は愛を武器にする
試そうとして自らも傷つく
宅 朱未
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月夜に向かって叫び飛ぶ鳥
その薄いベールの羽の色
薄紫に透きとおり咲く石の花
その地下に流れる水の色
濃い緑に縁どられ白く煙る森
その静けさをゆらぎ渡る風の色
過去現在未来を紡ぎ束ねた虹の糸
その弦を響き伝える音の色
灰色にふくらむ星を抱く蒼い海
その愛と苦しみの涙の色
恐れ疑いくり返す嘘の歴史の輪
闇に救い求め差し出す幾千の腕の色
宅 朱未
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赤い長靴はいて
わざわざ水たまりをさがして
ピッチピッチ チャップチャップ ランランラン
傘をほおり投げて
目を閉じ大きく手をひろげて
上をむぅいて あぁるこおぉよ
ずぶぬれになっても気持ちよかった
叱られたって平気だった
昔 きれいでおいしかった雨が
今 酸っぱくて濁っていて怖い
濡れると頭にしみる
煙みたいな匂いがする
大事なものをどんどん溶かす
森が枯れてやせてゆく
熱帯雨林に 屋久島に
きれいな雨が降っているだろうか
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